絵本「夜の友だち」解説
少し前に描いた絵本「よるの友だち」について、自分の考えを整理するために少しまとめておきます。
女の子も、目立たない犬も、両方主役。
彼女は、母とふたり暮らし。
父については、なにもかもが自分より大きかったことしか覚えていない。
大好きな母は夜になるといつもどこかへ出かけてしまう。
そのたび彼女は自分の淋しさを埋めてくれるなにかを探している。
窓から抜け出し、彼女は探すが、それはなかなか見つからない。
見つかったとしても、すなおに自分のものになるはずがないと彼女は思っている。
今まで、彼女はほしいと思ったものを手に入れたことがない。
だから捕まえようと、網をもってさまよう。
夜の闇や淋しさは、彼女を盲目にしてしまって、探しものは見つからない。
そんな彼女にずっとついてくる犬がいる。
夜の闇にまぎれて犬はひっそりとそこにいる。
ずっと彼女を見ている。
盲目になっている彼女は犬に気付かない。
気付いてほしいと犬は思っているかもしれない。
見えないものを追いかける彼女を、犬は追いかける。
見えているのに手に入らない。
網をにぎれる手がない。伝えられる言葉がない。
そばにいて見つめることしかできない。
探しものが見つからないまま、彼女はいくつも朝を迎える。
明るくなれば彼女は見える。
母が帰り淋しさは消える。
彼女には母しか見えなくなる。
犬は遠くで彼女たちを見ている。
夜がくる。
今日も彼女は夜をさまよう。
彼女はもう世界のはてまで見たような気分になっている。
とてつもなく疲れている。
それでも見つからない探しものを、彼女はついにあきらめて家に帰る。
まだ夜は終わっていない。
明るい部屋の中に彼女はすわりこむ。
開けっぱなしの窓から、夜が入ってくるようだ。
夜はすぐに部屋いっぱいに広がる。
淋しさをつれてくるはずの夜に包まれて、なぜかあたたかさを感じる。
ふいに思う。
嫌いでたまらなかった夜が、実はずっとそばにいてくれた。
夜が母を奪うのではなく、母のいない時間を、夜が埋めてくれている。
そう思うと彼女はずいぶん楽になる。
思い込みにすぎなくても彼女の視界は少し広がる。
そうすると、今度は淋しそうな目をした犬が見える。その目を彼女は知ってる。
暗くて明るい部屋の中で、淋しいよっつの目がぶつかる。
おそるおそる触れるととてもあたたかい。
捕まえたりしなくても、あたたかいままそこにいる。
ずっと自分を見ている目。
自分を必要とする目。
探していたのはこれかと気付く。
網はいらず、捕まえて手に入るようなものでもない。
網を捨て、夜よりずっとあたたかな犬とくっついて、初めておだやかな気持ちで、彼女は眠る。
犬も眠る。
夜が彼らを見守っている。
すべてが考え方で解決するわけじゃないけれど、それが解決へのきっかけになることもある。
幸せなふたりで終わるけれど、ハッピーエンドじゃない気もする。
本当の幸せなんてどこにあるのか分からない。
人それぞれと言ってしまえば途方がない。
けれど幸せというものは、網で捕まえられるようなものでは、あまりないんじゃないかなあとは思う。
長々と文章にしたりしなくても、絵とわずかなことばで全てが伝わるようなものを作りたい。
まだまだです。がんばります。